営業・人事・開発もDX!生成AIで実現した業務効率化の成功事例8選

運営会社:合同会社サステックス


元Microsoftエンジニアが立ち上げたAI・システム開発に特化したテクノロジーカンパニー。
機械学習や生成AIを活用したPoC開発や業務効率化、プロダクト構築を支援。
累計200件以上のAI開発・技術支援の実績があり、伴走型支援が強み。

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こんにちは!サステックスのエンジニア、大谷です。

近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(Generative AI)の登場により、様々な業務の効率化と生産性向上が大きく注目されています。例えば、経理・人事・総務などのバックオフィスでは、日々多くの定型業務や文書作成作業が発生します。こうした繰り返しの多いルーチン業務を自動化し、人間の負担を減らすことは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)における重要な課題です。

​​私自身、前職で月末の請求書発行や経費精算をすべて手作業で行い、毎月のように深夜残業が発生していた苦い経験がありますが、今は簡単にこのような定型業務の自動化を行う事が出来るようになってきたので、便利な時代になりました。本記事では、実際に生成AIを活用して生産性を向上させた業務改善の事例8選を詳しく紹介します。ユーザーの疑問やニーズに応える具体例を挙げながら、それぞれの効果やポイントを解説します。ぜひ自社のDX推進のヒントとしてお役立てください。

目次

【コミュニケーション&サービス|生成AIで業務改善】3 選

1. AIによる問い合わせ対応の自動化

ックオフィスの代表的な定型業務の一つが、顧客や取引先からの問い合わせ対応です。生成AIを活用することで、メールやチャットで寄せられる質問への一次対応を自動化できます。

米国の不動産管理のSaaSシステム「AppFolio Smart Maintenance」では、入居者からのテキストメッセージや電話の内容をNLP(自然言語処理)で解析し、「排水のつまり」や「給湯器の故障」などのトラブル内容を自動で分類します。

さらに、緊急性を判断するための質問をAIが自動で行い、その結果に応じて適切な対処方法や修理業者の手配案を提案します。

オペレーターは、AIがまとめた内容を確認してボタンを1回クリックするだけで修理依頼が完了するため、対応のスピードと正確さが大幅に向上します。

AppFolio Smart Maintenance(米 AppFolio)のAIによる問い合わせ対応自動化

導入効果 

  • 対応スピードの劇的向上

NLP で問い合わせ内容を即時に分類し、緊急度を自動判定。人間は要約を確認してクリックで発注するだけなので、初動対応がほぼリアルタイムになります。

  • 正確性と品質の安定化

標準化されたトラブルシューティング手順と最適な業者手配案を AI が提示するため、ヒューマンエラーや対応ばらつきが大幅に減少します。

2. 長文コミュニケーションの要約共有

メールやチャット、顧客とのやりとりが長文化すると、内容を把握するだけでも大きな負担になります。生成 AIはこうした長文コミュニケーションを要約し、要点を簡潔に抽出してくれるため、担当者の時間を大幅に節約できます。

そこで注目されているのが、Front という共有インボックス型SaaSです。日本ではあまり馴染みがありませんが、Frontは Gmail・Outlook・Slack・WhatsApp など多様なチャネルから届くメッセージを1か所に集約し、チームで共同対応できるプラットフォームとして世界中の企業が採用しています。

その Front に搭載された AI Summarize 機能を活用すると、長いメール/チャットスレッドを自動で最新の概要にアップデート可能です。実際に不動産テック系スタートアップの BellmanHostnFly では、1 日数千件規模の問い合わせを Front 上でタグ付けしつつリアルタイム要約し、担当者が膨大なスレッドを一件ずつ確認しなくても、すばやく次の対応へ移れる体制を構築しています。

導入効果 

  • 担当者の読解時間を大幅短縮

長いスレッドを AI が要約し最新状況を一目で示すため、担当者は全文を遡らずに済み、次のアクションにすぐ移れます。

  • 情報共有・引き継ぎの効率化

要約が常に更新されることで、他メンバーも経緯を即座に把握可能。担当交代やチーム協業時の「説明コスト」が激減します。

3. カスタマーサービス品質管理の自動化

顧客対応の品質を維持・向上させることは企業にとって重要ですが、「コールセンターの電話対応を人手で評価するのは手間がかかり難しい」という課題がよく挙げられます。そこで生成 AI を活用し、通話内容を自動で文字起こしして品質チェックまで行う取り組みが広がっています。 

具体例としては、Dialpad の 「Ai CSAT」 を導入した SaaS/EC 企業などが挙げられます。Ai CSAT(Dialpad) は、通話内容を AI がリアルタイムで文字起こし・解析し、アンケートなしで顧客満足度(CSAT)スコアを自動推定する機能です。推定結果と「改善すべき発話」などのハイライトがダッシュボードに即時表示されるため、管理者はオペレーターへその場でフィードバックを出せます。これにより回答率の低い事後アンケートに頼らず、すべての通話から顧客感情を把握できる仕組みを実現します。

Ai CSATの活用イメージ

導入効果 

  • 顧客体験 (入居者満足)

すべての通話を対象に CSAT をリアルタイム推定するため、アンケート回答率 5 % という「サイレント多数」の声も把握でき、実態に沿った満足度向上施策が打てる。

  • 品質管理 & オペレーター育成

CSAT スコアと改善ポイントが可視化されることで、オペレーター自身がセルフチェックしやすく、コーチング工数も削減。

【データ入力・分析|生成AI活用で業務効率化】3 選

1. CRMデータ入力の自動化

営業活動や顧客管理に欠かせないCRM(顧客関係管理)システムへのデータ入力作業は、多くの営業担当者にとって負担となっています。生成AIを活用すれば、このCRMへの入力業務も自動化可能です。具体的には、営業電話やオンライン商談の会話記録から重要なポイントを抽出し、商談記録や進捗を自動でCRMに登録するといった使い方がされています。

例えば Microsoft Sales Copilot(旧 Viva Sales) では、Teams 会議をリアルタイムで文字起こしし、アクションアイテムを抽出して Dynamics 365/Salesforce のタスクに自動登録できます。営業担当者は会議後のメモ入力やフォローアップタスク作成を行う必要がなく、1 件あたり約 30 分の工数削減 が報告されています。

導入効果 

  • 入力工数をほぼゼロ化

商談の音声・テキストから AI が重要情報を抽出して自動で CRM に登録するため、営業担当者は手入力の手間がほとんどなくなり、その時間を新規商談や顧客対応に充当できます。

  • 品質管理 & オペレーター育成

標準化フォーマットで漏れなく入力されることでデータの正確性・網羅性が高まり、最新状況が常に CRM に反映。マネージャーはパイプラインをリアルタイムで把握でき、迅速な意思決定や的確なフォロー指示が行えます。

2. 社内ナレッジ検索・FAQ対応

社内規定や業務マニュアル、ナレッジベースが整備されても、「必要な情報にたどり着けない」「どの資料に書いてあるかわからない」といった声は絶えません。そこで生成AIを使った社内チャットボットナレッジ検索システムが注目されています。例えば、社内のあらゆる文書(規程集、議事録、データベースなど)を横断的にインデックス化し、社員が自然文で質問するとAIが適切な回答や関連情報を提示する仕組みです。「○○の今年度の予算はいくら?」と尋ねると、Slackの議論スレッドや社内Wikiの該当ページから関連する答えを抜粋して教えてくれるイメージです。

例えばGlean × Super.comではSlack・Confluence・GitLab・Google Drive などを横断検索し、質問に自然文で回答。リモート体制でも社員 1 人あたり平均 20 分/日の検索時間を削減し、全社で 月1,500 時間以上の工数削減・オンボーディング期間 20 %短縮を達成しました。

導入効果 

  • 情報探索時間を大幅短縮

社内文書を横断検索し、自然文で聞くだけでピンポイント回答を得られるため、「どこに書いてあるか探す」時間がほぼ不要に。社員は思考を中断せずに業務を進められ、生産性が向上します。

  • ナレッジ活用と業務品質の底上げ

埋もれていた議事録・Wiki・規定集などを AI が自動で提示することで、属人的な暗黙知が共有知へと転換。正確な最新情報に基づいた意思決定や手続きが可能になり、ミス防止と業務標準化が促進されます。

弊社の技術ブログでもDifyのナレッジ機能を活用した簡易的な社内FAQの作成方法の記事を執筆しているので、とりあえず作成してみたい方はぜひ読んでみてください!

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社内FAQチャットボット構築ガイド:Difyのナレッジ機能で実現する効率的な問い合わせ対応 Difyのナレッジ機能で社内FAQチャットボットを簡単構築!問い合わせ対応を自動化し、業務効率を大幅に改善する方法を解説。

3. マーケティング・文章コンテンツ作成の効率化

マーケティング部門や広報部門でも生成AIによる文章作成支援が盛んです。例えば、経営層の発信するSNS投稿やブログ記事などのコンテンツをAIが下書きし、担当者が仕上げることで大幅な時間短縮を実現したケースがあります。

また、商品紹介文章やプレスリリースの叩き台をChatGPTに作成させるなど、クリエイティブ分野でも定型的な部分をAIに任せる動きが広がっています。実際「パターン化された文章であれば生成AIに置き換え可能だ」との声もあり、この考え方次第でさまざまなビジネス文書のドラフト作成に応用できるでしょう。

実際に、世界60か国で情報発信を行うCushman & Wakefieldでは、Jasperを活用してレポート・プレスリリース・SNS投稿などを下書きし、社内データを基に自動リライトすることで年間1万時間超を削減し、Webコピー作成を50%高速化。担当者は戦略立案に集中できる体制を構築しました

導入効果 

  • コンテンツ制作時間の大幅短縮

SNS投稿やブログ記事、プレスリリースなどの下書きを生成AIが自動生成することで、担当者はリライトと最終調整に専念でき、制作サイクルが数時間〜数日に短縮されます。

  • 情報発信量と品質の同時向上

忙しい経営層やマーケ担当者でも、AIの提案をベースに定期的かつ一貫性のあるコンテンツを発信できるため、ブランドメッセージの質を保ちながら発信頻度を高め、リーチとエンゲージメントを拡大できます。

【人材ライフサイクル&開発|生成AI活用で業務効率化】2 選

1. 新入社員オンボーディングの効率化

新入社員の受け入れ業務(オンボーディング)にも生成AIが活用されています。入社手続きの案内、社内ルールやツールの使い方の説明など、同じ内容を複数回にわたり教える必要がある場面で、AIが対話形式で新人の質問に答えたり、個々人に合わせた情報提供を行うのです。チャットボット型のオンボーディング支援AIを導入すれば、新人は24時間いつでも疑問を解消でき、人事担当者はイチから説明する手間を省けます。

例えば、「経費精算のやり方が分からない」という質問に対し、AIが手順書や関連規程を参照しながら具体的な手続き方法を案内してくれるなど、まるでマンツーマンでサポートしているかのような体験を提供できます。

実際には AirAsia が Leena AI のチャットボット「AskPAC」を導入し、新入社員を含む従業員からの問い合わせの約 30 % を自動解決、平均対応時間を 41 %短縮することで HR の負担を大幅に削減しました。

導入効果 

  • 人事・教育コストの削減

AIチャットボットが24時間対応で入社手続きや社内ルールを案内するため、人事担当者や現場メンターが同じ説明を繰り返す工数を大幅に削減できます。

  • 新人の自律的な学習促進と定着率向上

疑問をその場で解消できるため、オンボーディングの理解度が早期に深まり、業務習熟スピードが向上。サポートの即時性により不安が軽減され、離職リスクも抑え

2. ソフトウェア開発業務の効率化(コード生成)

開発者向けでもAIは多く活用されています。例えば社内向けのツール開発やスクリプト作成でも生成AIが役立ちます。プログラミングの世界では、GitHub CopilotのようなAIコード補助ツールが既にエンジニアの生産性向上に貢献しており、ある調査では「Copilotを使った開発者はタスクを55%高速に完了した」とのデータも報告されています。

実際の導入例として、米金融大手 Morgan Stanley は社内生成 AI ツール「DevGen.AI」を活用し、レガシーコードを最新の開発環境に自動変換するプロセスを大幅に効率化しました。2025 年上半期だけで開発工数を 28 万時間以上削減し、エンジニアを保守的な変換作業から解放してイノベーションに集中させています。

このように、Copilot や ChatGPT に加えて、最近よく使われている Cursor、Claude 3 Code、Gemini Code Assist などを組み合わせてコードの骨子を高速生成し、最終的なレビューとセキュリティチェックを人間が行うハイブリッド体制を敷くことで、社内向けの小規模ツール開発でも開発サイクルを驚くほど短縮できます。

私自身、開発で Cursor を活用していますが、要件を入力するだけで関数の雛形や最適なライブラリの候補を提示してくれるため、実装にかかる時間を大幅に短縮できました。また、既存コードとドキュメントを横断的に検索して関連実装例や設計方針を示してくれるので、チーム全体で認識合わせがしやすく、レビューやコミュニケーションの工数削減にもつながっています。

導入効果 

  • 開発リードタイムの大幅短縮

GitHub Copilot などの AI コード補助が骨子や定型処理を瞬時に生成し、エンジニアは仕上げとレビューに専念できるため、社内ツールやスクリプトの開発が調査値で最大55%早く完了します。

  • 品質向上と付加価値業務への集中

AI がベストプラクティスやテスト例を提案してくれることでバグや書式ゆれが減少し、レビュー工程も効率化。エンジニアは設計・セキュリティ強化・ユーザ体験改善など高付加価値タスクに時間を割けるようになります。

まとめ

以上、生成AIによる業務効率化の事例8選を紹介しました。いずれの例も、単純作業の自動化による時間短縮と、AIが提示するインサイトの活用による業務品質の向上という二つの側面で生産性向上に寄与しています。ポイントは、AIに任せられるところは任せ、人間はより創造的・戦略的な業務にシフトすることです。

もっとも、生成AI活用にあたっては情報セキュリティや誤回答(いわゆるAIのハルシネーション)への対策も欠かせません。社内規程の整備や、人間による結果チェックのプロセスを組み込むことで、信頼性を担保しつつAIの恩恵を受けることが重要です。

今後も生成AIの技術は進化し続け、活用できる業務領域はさらに広がっていきます。まずは自社の課題にフィットする小さなユースケースから実証実験を始めてみてはいかがでしょうか。

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